
気になる建売の重要事項説明書に、「隣地の屋根の一部が越境しています。覚書を取り交わす予定です」と書いてありました。このまま買っても大丈夫でしょうか。
「越境」と書かれていると、急に不安になりますよね。隣の家との話なので、自分ではどうにもできない気もします。
先に結論を言います。越境があっても覚書で扱いが決まっていれば買える物件はあり、大事なのは覚書の中身と引渡しまでに結ばれるかどうかです。
中身を確かめずに買うと、
隣が代替わりしたときに覚書が引き継がれず、建て替えのたびに話し合いからやり直しになることがあります。
避け方は、契約前に覚書の写しをもらい、売買や相続のあとも引き継ぐという条項があるかを読むことです。
この記事では、越境の覚書に書く項目、2023年4月に変わった民法のルール、建売で越境が見つかったときの確かめ方、私道の通行料の考え方を、条文と当社の集計をもとにまとめます。
この記事で分かること
越境の覚書とは何か
越境しやすいものと、2023年4月の民法の改正
覚書に書く8つの項目と承継の条項
建売で越境があるときに契約前に聞くこと
私道の通行料がかかる場合とかからない場合
越境の覚書とは越境をすぐ直さない代わりに将来の扱いを決める書面


越境(えっきょう)は、隣の土地の物が境界線を越えて、こちらの土地に入っている状態です。こちらの物が隣に出ている場合も、同じく越境と呼びます。
越境の覚書(おぼえがき)は、隣どうしで越境があることを認め合い、将来どうするかを決めて残す書面です。
屋根や塀は、すぐに壊して直すのは現実的ではありません。そこで「今はこのままでよい。建て替えるときは境界の内側に収める」と約束し、署名して残します。
覚書は登記できないので所有者が変わると効力が争われることがある
ここが覚書のいちばんの弱点です。民法177条は、不動産の権利の変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと定めています。
覚書は隣どうしの約束で、登記簿には載りません。そのため隣の土地が売られたり相続されたりすると、新しい持ち主に覚書を守ってもらえないことがあります。
だからこそ、覚書に「次の持ち主にも引き継ぐ」という条項を入れておくことが大切です。
覚書は契約で、登記ではありません
隣の土地が売られたり相続されたりしたら、新しい持ち主と結び直すのが確実です。



覚書があっても、隣の人が代わったら意味がないのですか。



意味はあります。承継の条項があれば、売るときに次の持ち主へ引き継ぐよう求める約束になります。隣の人が代わったら、新しい持ち主と改めて結び直しておくと安心です。
越境しやすいのは屋根と塀と植栽で地中の配管も越境になる


越境は、目に見える空中の物だけではありません。地中の配管や基礎も、境界線を越えていれば越境です。
| 越境しやすいもの | よくある場所 | 見つけ方 |
|---|---|---|
| 屋根・軒・雨樋 | 隣との間が狭い区画 | 境界線の真上を見上げる |
| ブロック塀・フェンス | 境界線の上や際 | 杭と塀の位置を見比べる |
| 植栽(枝と根) | 古い住宅地の隣 | 枝の張り出しを見る |
| 水道管・排水管 | 古家を壊した跡の分譲地 | 図面と桝の位置を見る |
| 電線(引込線) | 隣の電柱から引く区画 | 空中の線をたどる |
| 基礎・擁壁 | 高低差のある区画 | 測量図と照らし合わせる |
屋根の雨水については、民法218条が直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けてはならないと定めています。雨樋の越境は、雨水の向きの話にもつながります。
当社集計の販売図面224枚では越境の記載は4枚で全部が隣から入る越境
当社が集めたレインズの販売図面224枚を調べると、越境の記載があったのは4枚(1.8%)でした。
内訳は、隣の屋根の越境が2枚、隣の屋根と雨樋の越境の可能性が1枚、隣の花壇の一部の越境が1枚です。屋根の2枚は同じ分譲地の別の区画とみられます。4枚とも、隣の物がこちらに入ってくる向きでした。
電線の越境や電柱の扱いは敷地内の電柱はどうなる?電柱敷地料の金額と建売を買ったあとの名義変更と移設の費用と窓口を解説で、水道管の引き込みは水道の引き込み費用はいくら?加入金の関西の市の比較と13mmと20mmの違いと建売で別途になる例を解説で解説しています。
2023年4月の民法の改正で越境した枝は催告して切り取れるようになった


2023年4月1日から、隣どうしの関係を決めた民法のルール(相隣関係)が変わりました。越境に関わるのは次の3つです。
| 条文 | 中身 | 越境との関係 |
|---|---|---|
| 民法233条(竹木の枝) | 催告しても相当の期間内に切らないときなどは自分で枝を切り取れる | 植栽の越境 |
| 213条の2(設備) | 電気・ガス・水道を引くため必要な範囲で他人の土地に設備を置ける | 配管・電線の越境 |
| 209条(隣地の使用) | 境界の調査や塀の修繕のため、通知して隣地を使える | 越境を直す工事 |
枝の切り取りは催告から2週間程度が目安で費用は竹木の持ち主に請求できる
233条3項で自分で切り取れるのは、催告したのに切らないとき・持ち主が分からないとき・急迫の事情があるときの3つです。根は、以前から自分で切り取れます。
法務省の解説は、「相当の期間」を基本的には2週間程度としています。また、自分で切り取った費用は、基本的には竹木の持ち主に請求できると説明しています。
ただし、いきなり切るのは避けたほうが無難です。まず書面で頼み、日付を残してから進めると、あとで説明がしやすくなります。
枝の越境の進め方
①書面で切除を頼む
②2週間程度待つ
③切らなければ自分で切り、費用を請求する
配管の越境は償金を払えば設置できるがルールを覚書に書いておく
213条の2は、ほかの土地を通らないと水道やガスが引けない場合に、必要な範囲で設備を置けると定めています。置く側は、あらかじめ目的・場所・方法を通知します。
法務省の解説では、償金は設備を置いた部分の使用料に当たる額で、1年ごとに払うこともできるとされています。改正の前は「不当な承諾料を求められるケースも」あったと書かれています。
法務省の所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)も、設備設置権が成り立つ場合は隣の持ち主の承諾書がなくても民法上は設備を置けること、不当な承諾料に応じる義務はないことを明記しています。
越境の覚書に書く8つの項目といちばん大事な承継の条項


覚書の書き方やひな形は、法律で決まっていません。ただ、あとで揉めないためには、少なくとも次の8つを入れておきたいところです。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 当事者 | 両方の土地の持ち主の氏名と住所 |
| 土地 | 両方の土地の所在と地番 |
| 越境物 | 何がどちらからどちらへ越えているか |
| 範囲 | 越えている長さや面積(図面や写真を添える) |
| 今の扱い | 現状のままとし、すぐの撤去は求めないこと |
| 建て替えのとき | 建て替えや改修のときに越境を解消すること |
| 承継 | 売買や相続のあとも次の持ち主に引き継ぐこと |
| 署名 | 日付・署名・押印と、通数(各1通など) |
いちばん大事なのは売買や相続のあとも次の持ち主に引き継ぐという承継の条項です。この条項がないと、覚書は最初に結んだ2人の間の約束で終わってしまいます。
範囲は地積測量図と境界杭の位置にもとづいて書く
越境の範囲は、境界線がどこかが決まっていないと書けません。覚書は、境界が確定していることが前提になります。
境界がはっきりしないときは、法務局の筆界特定制度を使う方法もあります。
境界線の位置は、地積測量図と現地の境界杭で確かめます。図面の読み方は地積測量図とは?見方と取り方と公図との違いと作られた年で変わる信頼度を建売の買主向けに解説で、杭の見方は境界杭とは?見方と種類とない場合の境界確定費用とブロック塀の境界を建売の買主向けに解説で解説しています。
長く放っておくと時効を主張されることもある
民法162条は、他人の物を20年(善意で過失がなければ10年)、所有の意思をもって平穏かつ公然と占有した人は所有権を取得すると定めています。
越境した部分について、相手から時効を主張される可能性もゼロではありません。覚書で「越境していることを互いに認めている」と残しておくことは、この点でも意味があります。
建売で越境があるときは契約前に売主に4つのことを聞く


建売ではみ出しが見つかっても、それだけで買うのをやめる必要はありません。大事なのは、どう扱うかが書面で決まっているかです。
| 聞くこと | 確かめる中身 |
|---|---|
| どちら向きか | 隣から入ってくるのか、こちらから出ているのか |
| 何が越えているか | 屋根・雨樋・塀・植栽・配管のどれか |
| 覚書はあるか | すでにあるのか、引渡しまでに結ぶ予定か |
| 写しをもらえるか | 覚書の写しを買主にも渡してもらえるか |
覚書がまだなら、引渡しまでに覚書を結んで買主に渡すことを、契約書の特約に書いてもらうのが確実です。
特約に書いてもらう内容の例
引渡しまでに越境の覚書を締結すること
覚書の写しを買主に交付すること
締結できないときの扱い(解除できるか)
こちらから出ている越境は自分が直す側になる
隣から入ってくる越境なら、困るのは主に建て替えのときです。一方、こちらの物が隣に出ている越境は、買ったあとは自分が直す側になります。
民法234条は、建物を築造するには境界線から50cm以上離すと定めています。境界ぎりぎりの建売では、出窓や雨樋が越えていないかも見ておきます。
売主は重要な事項を故意に告げてはいけない
宅地建物取引業法47条は、取引の判断に重要な影響を与える事項を故意に告げない行為を禁止しています。越境を知っていて黙っていることは許されません。
とはいえ、売主も気づいていない越境はあります。気になる区画は、こちらから具体的に聞いておくのが安全です。
越境は販売資料にほとんど書かれないので重要事項説明で確かめる


当社の物件データ1,347件のうち、備考や特記事項に越境の記載があったのは1件(0.1%)だけでした。販売図面224枚でも4枚です。
この数字は、実際に少ないことを意味するわけではありません。販売資料には書かれず、重要事項説明の段階で初めて出てくることがあります。
なお、当社の物件データは飯田グループの物件が多く、関西の建売全体をそのまま表すものではありません。記載がなくても、越境がないとは限りません。
契約前に重要事項説明書の案を見せてもらう
重要事項説明は、契約の当日に読み上げられることもあります。その場で初めて越境を知ると、落ち着いて判断できません。
契約の数日前に、重要事項説明書と契約書の案をもらっておくと安心です。契約から引渡しまでの流れは建売住宅の引渡しまでの流れ|契約から鍵を受け取るまでの期間にまとめています。
私道の通行料は持分と地役権と囲まれた土地かで4つに分かれる


境界の話と並んでよく聞かれるのが、私道の通行料です。かかるかどうかは、土地と道の関係で決まります。
| 場合 | 通行料 | 根拠 |
|---|---|---|
| 私道に持分がある | 原則かからない | 自分の持ち物でもあるため |
| 通行地役権が設定されている | 設定のときの約束で決まる | 民法280条 |
| 公道に出られない土地 | 償金を払う(1年ごとも可) | 民法210条・212条 |
| 道路が公道 | かからない | 市町村などが管理する道 |
民法210条は、ほかの土地に囲まれて公道に通じない土地の持ち主は、囲んでいる土地を通行できると定めています。そのかわり212条で、通る土地の損害に償金を払うとされています。
建売の分譲地では、私道の持分や通行地役権は登記で確かめられるので、通行料の有無は契約前に調べられるということです。
通行料や掘削の承諾は覚書や承諾書で残す
共有の私道で軽微な変更をするときは、2023年4月から持分の価格の過半数で決められるようになりました(法務省のパンフレット)。
持分のない私道を通る場合は、通行と掘削(水道管などの工事)の承諾書をもらっておくと安心です。販売図面224枚の中にも、「共有通路覚書取交わし予定有」と書かれた図面が1枚ありました。



持分のない私道に面した建売です。通行料を請求されることはありますか。



通行地役権の登記や通行の承諾書があれば、その約束の内容で決まります。契約前に登記簿と承諾書の写しを見せてもらい、通行料の取り決めがあるかを確かめましょう。
私道の見分け方は私道とは?公道との見分け方と私道負担・持分・トラブル・固定資産税を解説で、通行地役権の登記の読み方は地役権とは?通行地役権の登記の見方と承役地と要役地と消滅時効を建売の買主向けに解説で解説しています。
越境の覚書に関するよくある質問


- 越境の覚書に決まった書式はありますか。
-
法律で決まった書式はありません。当事者・土地・越境物・範囲・今の扱い・建て替えのとき・承継・署名の8つを入れておくと、あとで揉めにくくなります。
- 覚書は登記できますか。
-
できません。登記できないので、隣の持ち主が代わると守ってもらえないことがあります。承継の条項を入れ、代わったときは結び直します。
- 越境があると住宅ローンは通りませんか。
-
越境だけで必ず通らないわけではありません。金融機関から越境の内容や覚書の有無を聞かれることがあるので、写しを用意しておきます。
- 隣の木の枝が越境しています。切ってもいいですか。
-
まず持ち主に切ってもらうよう頼みます。催告しても相当の期間(法務省の解説では基本的に2週間程度)内に切らないときなどは、2023年4月から自分で切り取れます。
- 越境を放っておくとどうなりますか。
-
建て替えや売却のときに話し合いが必要になります。長く放っておくと、民法162条の時効を主張される可能性もあるので、覚書で互いに認めていることを残します。
- 私道の通行料は払わないといけませんか。
-
私道に持分があれば原則かかりません。持分がなく通行地役権もない場合は、通行の承諾と条件を書面で確かめておきます。
越境の覚書は承継の条項まで読んで受け取る|押さえる6つのこと


最後にまとめます。越境は直すより、覚書で将来の扱いを決めておくほうが現実的です。
- 越境しやすいのは屋根・雨樋・塀・植栽で、地中の配管も越境になる
- まず隣から入ってくる越境か、こちらから出ている越境かを確かめる
- 覚書には売買や相続のあとも引き継ぐという承継の条項を入れる
- 覚書がまだなら、引渡しまでに結ぶことを契約書の特約に書いてもらう
- 覚書の写しをもらい、境界の書類と一緒に保管して売るときに渡す
- 私道の通行料は、持分と通行地役権を登記で確かめれば先に分かる
当社は新築の建売を仲介手数料0円でご案内しています。物件の良いところも気になるところも、買主の側に立ってそのままお伝えします。ご希望があれば、重要事項説明書の案を契約前に取り寄せ、越境や私道の書類を一緒に確かめます。
新築一戸建て・建売を買うとき、仲介手数料は0円になります。物件価格が上がるほど、差は大きくなります。
| 物件価格 | 通常の仲介手数料(税込) | ラクチン不動産 |
|---|---|---|
| 2,500万円 | 89万1,000円 | 0円 |
| 3,000万円 | 105万6,000円 | 0円 |
| 3,500万円 | 122万1,000円 | 0円 |
| 4,000万円 | 138万6,000円 | 0円 |
| 4,500万円 | 155万1,000円 | 0円 |
なぜ0円にできるのか
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