
建売って、地盤調査をしていないことがあるの?



資料のどこを見ても地盤のことが書いていない
先に答えます。建売で地盤調査が省かれることは、制度上あり得ます。2階建て以下の木造一戸建ては、現地調査の結果しだいで調査を省略してよいことになっているからです。
そして資料に書いていないのは当然で、物件情報には地盤を書く欄がそもそもありません。当社が掲載している関西の建売1,356件を調べても、地盤調査の結果を示す項目は1件も存在しませんでした。
一方で、その土地がどんな地形の上にあるかは国が公開しているデータで誰でも分かります。当社が1,356件すべてを地形分類にかけたところ、液状化しやすい土地が10.6%、やや液状化しやすいまで含めると41.2%でした。
いちばん怖いのは、地盤改良が入っているかどうかも分からないまま契約し、引渡し後に不同沈下が起きたときに何も手元に残っていないケースです。
避け方は1つです。申し込む前に、地盤調査報告書を見せてもらうこと。無いなら無いで、その理由を書面で確かめます。手順はこの記事の後半にあります。
- 建売で地盤調査が省ける条件(制度の条文で確認)
- 関西の建売1,356件の地形分類と液状化のしやすさ
- 洪水の浸水想定区域に入っている物件が45.3%だという実数
- 自分で5分で調べる方法
- 売主に出してもらう3つの書類
- 地盤改良が入っている物件の見方
地盤調査は「必ずやる」ではない|省ける条件が決まっている
新築住宅の売主には、引渡しから10年間の瑕疵担保責任があります。これを果たすため、ほぼすべての建売が住宅瑕疵担保責任保険に入ります。
その保険に入るための技術基準が「住宅瑕疵担保責任保険 設計施工基準」です。地盤について、こう書かれています。
基礎の設計に先立ち、敷地及び敷地の周辺状況等について適切な現地調査を行ったうえで地盤調査を行うものとする。ただし、一戸建てにおける2階建て以下の木造住宅は、「現地調査チェックシート」に従って行った現地調査の結果、地盤調査が必要ないと認められる場合はこの限りでない。
2 地盤調査は、地盤の許容応力度及び軟弱地盤又は造成地盤等が判断できる調査を行い、実施する地盤調査方法や敷地条件に応じた計測箇所で計測を行うものとする。なお、スウェーデン式サウンディング調査の場合は4隅付近を含め4点以上で行うことを原則とする。
3 地盤調査の結果は、適切に保管する。
読み方は3つです。
- 建売の多く(2階建て以下の木造)は、省略できる側にいる
- 省略する場合も「現地調査チェックシート」は必ず作られている
- 調査をした場合、その結果は保管されている=買主が求めれば出せる
つまり「地盤調査してない」が本当だったとしても違反ではありません。ただしチェックシートという紙は必ずあるので、何も無いということは起こりません。
建築基準法のほうは「地盤調査を行い」と書いている
建築基準法施行令にも規定があります。
地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力は、国土交通大臣が定める方法によつて、地盤調査を行い、その結果に基づいて定めなければならない。ただし、次の表に掲げる地盤の許容応力度については、地盤の種類に応じて、それぞれ次の表の数値によることができる。
こちらにもただし書きがあります。表の数値を使えば、個別の調査をしなくても設計はできるという作りです。
法律も保険の基準も、どちらも逃げ道を残しています。だから「やっているはず」では済まないのです。
当社集計|関西の建売1,356件の4割は液状化しやすい地形の上にある
売主に聞く前に、自分で分かることがあります。国土地理院は全国の土地を地形で分類し、液状化のしやすさまで公開しています。
当社が掲載している関西の建売1,356件すべてを、その分類にかけました。
| 液状化のしやすさ | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 液状化しにくい | 590件 | 43.5% |
| やや液状化しにくい | 208件 | 15.3% |
| やや液状化しやすい | 415件 | 30.6% |
| 液状化しやすい | 135件 | 10.0% |
| 非常に液状化しやすい | 8件 | 0.6% |
「やや液状化しやすい」以上が558件で41.2%。4割強です。珍しい話ではありません。
どんな地形の上に建っているのか
| 地形分類 | 件数 | 割合 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 砂礫質台地 | 337件 | 24.9% | 比較的しっかりしている |
| 後背湿地 | 229件 | 16.9% | 川の氾濫でできた軟らかい土地 |
| 丘陵 | 226件 | 16.7% | 切土と盛土が混在しやすい |
| 扇状地 | 253件 | 18.7% | 土石流の経路になることがある |
| 谷底低地 | 117件 | 8.6% | 水がたまりやすい |
| 自然堤防 | 65件 | 4.8% | 周りより高く比較的安定 |
| 三角州・海岸低地 | 59件 | 4.4% | 軟弱地盤になりやすい |
| 砂州・砂礫州 | 24件 | 1.8% | 液状化の対象になりやすい |
| 干拓地 | 11件 | 0.8% | もとは水面 |
| 旧河道・旧池沼 | 3件 | 0.2% | もとは川や池 |
後背湿地が229件で2番目に多いのが関西の特徴です。大阪平野も奈良盆地も、もとは川が運んだ土でできています。
府県によって傾向がはっきり違う
| 府県 | 件数 | 最も多い判定 | 「液状化しやすい」の割合 |
|---|---|---|---|
| 兵庫県 | 404件 | 液状化しにくい(53%) | 低い |
| 大阪府 | 382件 | 液状化しにくい(54%) | 11% |
| 奈良県 | 277件 | やや液状化しやすい(44%) | - |
| 滋賀県 | 167件 | やや液状化しやすい(39%) | 19% |
| 京都府 | 103件 | やや液状化しやすい(36%) | - |
| 和歌山県 | 23件 | やや液状化しやすい(30%) | 22% |
滋賀県は「液状化しやすい」が19%と関西で最も高く出ました。琵琶湖に向かって低くなる地形と、川が運んだ土の広がりが理由です。物件から確かめるなら滋賀県の新築一戸建てをご覧ください。
兵庫県と大阪府は半数以上が「液状化しにくい」でした。同じ関西でも、府県をまたぐと前提が変わります。
洪水の浸水想定区域に入っているのは45.3%
- 洪水 614件(45.3%)
- 高潮 135件(10.0%)
- 津波 33件(2.4%)
洪水の浸水想定は「1000年に1度」級の雨を想定した区域なので、広く取られています。該当するから危ないという単純な話ではありません。
見るべきは想定される深さです。0.5m未満と3.0m以上では、生活への影響も火災保険の考え方もまったく違います。
火災保険で水災をどう扱うかは火災保険の相場の記事にまとめています。



地形分類は造成する前の土地の履歴です。いま分譲地として整えられていても、もとが何だったかは変わりません。だから買う前に見る価値があります。
物件情報に地盤の欄は無い|だから自分で調べるしかない
不動産の物件情報には、設備や特記事項を書く欄があります。オール電化、食器洗浄乾燥機、角地、といったタグが並ぶ欄です。
その中に、地盤に関する項目はありません。当社が掲載している1,356件を調べても、地盤調査・地盤改良・地盤保証のいずれも0件でした。
つまり「書いていない」は「やっていない」の証拠にならない。書く場所が無いからです。ここを取り違えると、ずっと不安なままになります。
5分でできる調べ方
- 国土地理院の地理院地図で住所を入れ、「地形分類」を重ねる(もとが何の土地かが分かる)
- ハザードマップポータルサイトで洪水・土砂災害・高潮・津波を重ねる
- 古い航空写真(地理院地図の時系列)で、造成前に何があったかを見る
3つ目が効きます。40年前に池だった、田んぼだった、という履歴は航空写真で分かります。高低差のある土地なら擁壁の記事も一緒に読んでください。擁壁は高さ2mを超えると確認申請が要ります。
当社では物件ごとにこの3つを先に調べてお渡ししています。関西の新築一戸建て一覧の物件なら、どれでも対応できます。
売主に出してもらう3つの書類
| 書類 | 何が分かるか | 無い場合 |
|---|---|---|
| 地盤調査報告書 | 何点を測り、どの深さにどれだけの強さがあったか | 現地調査チェックシートを求める |
| 地盤改良の施工報告書 | どの工法で何mまで改良したか | 改良が不要と判断された根拠を聞く |
| 地盤保証書 | 保証期間・保証限度額・誰が保証するか | 保険の対象範囲を確認する |
設計施工基準の第4条第3項に「地盤調査の結果は、適切に保管する」と書かれています。調査をしたのなら、必ずどこかに紙が残っています。
「無い」と言われたら、それは省略されたということです。その場合は現地調査チェックシートで、どう判断したのかを確かめます。
地盤保証は10年のものが多い
地盤保証は、保険とは別の仕組みです。地盤改良を行った会社や保証会社が、不同沈下が起きたときの修復費用を保証します。
沈下で出る基礎のひびと乾燥収縮のひびの違いは新築の基礎のひび割れは何ミリから危ない?ヘアークラックと構造クラックの見分け方と保証と補修方法で解説しています。
見るのは期間・限度額・誰が保証するかの3つ。限度額が修復費用に足りているかは、必ず数字で確かめてください。
土地の形で注意する点は旗竿地の記事とセットバックの記事にまとめています。
地盤改良が入っている物件は、むしろ安心材料になる
「地盤改良あり」と聞くと悪い土地だと感じるかもしれません。実際は逆です。
- 調査をした証拠になる(改良の要否は調査結果から判断する決まり)
- 改良の費用はすでに物件価格に入っている(買主の追加負担は無い)
- 工法と深さが書面で残る=将来売るときに説明できる
設計施工基準の第5条は、改良の工法まで定めています。小口径鋼管杭なら杭先端が有効な支持層に達すること、柱状改良なら径・長さ・配置を支持力と沈下量の計算で決めることが求められます。
書面にこの工法名が出ていれば、計算をして決めたということです。何も書類が出てこない物件のほうが、判断材料がありません。
基礎の立上りは300mm以上と決まっている
現地で確かめられることもあります。設計施工基準の第6条第3項は、基礎の立上り部分の高さを地上部分で300mm以上と定めています。
内覧のときに、地面からコンクリートの立上りが何cmあるかを見てください。30cm以上あるのが標準です。
引渡し前に見るべき場所は内覧会のチェックリストの記事にまとめています。
建売の地盤についてよくある質問
- 地盤調査報告書を見せてくださいと言ったら、嫌がられませんか
-
通常の依頼です。設計施工基準で保管が求められている書類なので、売主の手元にあります。むしろ出し渋る売主のほうが問題で、その場合は理由を書面で求めてください。当社では申し込みの前に確認するようにしています。契約してからでは、内容を見て引き返すことが難しくなるためです。
- 液状化しやすい地形だと買わないほうがいいですか
-
そうとは限りません。関西の建売は4割強が「やや液状化しやすい」以上の地形にあり、避けていると選べる物件がほとんど残りません。見るべきは地形そのものではなく、その土地で地盤調査が行われ、必要な改良がされているかどうかです。地形分類は「そこを重点的に確かめる理由」として使ってください。
- 地盤改良の費用は買主が払うのですか
-
建売なら払いません。建物が完成した状態で売られているので、改良の費用はすでに物件価格に含まれています。注文住宅の場合は土地を買ってから調査をするため、改良が必要になると数十万円から100万円を超える追加費用が発生することがあります。この点は建売のほうが読みやすい部分です。
- 重要事項説明で地盤のことは説明されますか
-
造成宅地防災区域や土砂災害警戒区域に入っている場合、水害ハザードマップ上の所在地については説明の対象です。一方で、地盤調査をしたかどうか、地盤改良を行ったかどうかは、法定の説明事項には含まれていません。だから自分から聞く必要があります。聞けば答える義務は生じるので、申し込みの前に質問してください。
- 引渡し後に家が傾いたらどうなりますか
-
新築住宅は引渡しから10年間、構造耐力上主要な部分について売主が瑕疵担保責任を負います。基礎と地盤はここに含まれます。売主が倒産していても、住宅瑕疵担保責任保険に入っていれば保険法人から支払われます。ただし保険には限度額と免責があり、地盤保証とは別の仕組みです。だから引渡しのときに、保険の付保証明書と地盤保証書の両方を受け取っておいてください。
- スウェーデン式サウンディング調査は信用できますか
-
戸建て住宅で最も使われている方法で、設計施工基準でも4隅付近を含め4点以上で行うことが原則とされています。土を採取しないため土質そのものは分かりませんが、深さごとの硬さは把握できます。報告書を見るときは、測定点が4点以上あるか、支持層とされた深さがどこか、4点のあいだで差が大きくないかを見てください。点によって大きく違う場合は、その土地の中で地盤が一様でないということです。
まとめ|地盤は「書いていない」が普通。聞けば出てくる
- 2階建て以下の木造一戸建ては、現地調査の結果しだいで地盤調査を省略できる
- 省略した場合も「現地調査チェックシート」は必ず作られている
- 物件情報に地盤の欄は無い。1,356件すべてで0件だった
- 関西の建売の41.2%は「やや液状化しやすい」以上の地形にある
- 洪水の浸水想定区域に入っているのは45.3%。見るのは深さ
- 求める書類は3つ。調査報告書・施工報告書・地盤保証書
地盤は、買ったあとで直すと最も高くつく部分です。そして買う前なら、紙を1枚もらうだけで確かめられます。
気になる物件のURLを送っていただければ、地形分類とハザードを先に調べてお返事します。関西の新築一戸建てや大阪府の新築一戸建て、兵庫県の新築一戸建てから探すこともできます。














